June 9, 2017
6月の風。フェンスいっぱいにいろとりどりに結ばれたリボン。誇らしげにたなびいている。たまたま通りがかった、ご近所、セントマークス教会。力をわけてもらった気がして、うれしい。
まずは、ご近所自慢から。イーストビレッジ(東村でっせ)にあるセントマークス教会は、18世紀末に建立された。そのまま、いまだに教会として使われていて、ニューヨークで一番古い教会らしい(現存の建物自体はニューヨークで2番目に古い教会)。日本に開国をせまったペリーはここに葬られていたが、ある時期にむくろ(の残骸)はどこか別の場所に移され、いまは墓碑だけのこっている。地域住民にとってもニューヨークのほかのエリアの住民にとっても、ここは教会としてよりも、アートスペースとしておなじみだ。アーティスト・コミュニティへの支援に力を入れてきたことで長い歴史をもっている。私が中にはいるのも、詩の朗読会やパフォーマンス・イベントで、そんなときには、神さまの影はなく、アーティストたちの濃密な時間にひたされる。
6月のNYは、ゲイ・プライド月間でもりあがる。LBGTQとしての誇りを確認し、自由に向けた闘いへの新たな意欲を燃やす月なのだ。なぜ6月かというと、1969年6月にグリニッチビレッジのバー「ストーンウォール」で歴史に名を残すLBGTQたちの「蜂起」が起きたからだ。手入れを受けたLBGTQの客たちが、堪忍袋の緒が切れたとばかりに警察に果敢に立ち向かったのだ(警官に向かってハイヒールを投げたって聞いたことがある。ピンヒールが速球でとんできたらけっこう痛かったことだろう)。
風にひらひらするリボンがレインボーカラーなので、すぐにわかった。あ、プライド・リボンだ、と。赤=命、オレンジ=癒し、黄色=陽光、緑=静穏な自然、藍=調和、紫=スピリット。うーん、しかし、なぜだか芸術をシンボライズするターコイズがない。が、その代わりに、ここにはもう2色。黒とピンクのリボンもあった。
さらに貼り紙をみて、このインスタレーションの意味がもっと読めてきた。そして、リボンの1本1本に、人の名前と州名が書かれているわけも。貼り紙には、「ブラック&ピンク・プロジェクト」と書かれ、参加を呼びかけていた。
ブラック&ピンク(blackandpink.org)プロジェクトは、刑務所に収監されている、そして刑務所にかつて収監されたことがあるLBGTQの人たちとその家族・友人・支援者が行っている活動だ。リボンに書かれているのは、収監されているメンバーの名と、その人がいる刑務所がおかれている州の名前だ。
刑務所に収監されている人の数が世界一多い、大量投獄国アメリカ。その中で、投獄されたLGBTQは、誰にもまして、危険にさらされる。看守と他の囚人による身体的・精神的な攻撃のターゲットにされやすいのだ。でありながら、性的指向がゆえに家族から見放されていることも少なくなく、孤立無援になりやすい。
ブラック&ピンク・プロジェクトは、投獄されているLGBTQの声をきき刑務所の外で彼ら(彼女たち)を思っている人がいることを実感できるよう、ペンパル支援を呼びかけている。さらに、獄中でLBGTQの人たちがおかれている厳しい状況への世間の認識をうながし、アメリカで大量投獄を終わらせるよう、共に行動を起こそうと呼びかける。
そういえば、6月最後の週末には、オバマが政権を去るにあたって特赦が決まり、釈放されたばかりのチェルシー・マニング(元兵士でウィキリークスにイラクでの米軍による民間人射殺のビデオはじめ大量の情報をリークしたとして収監されていたが、収監中に女性のアイデンティティを宣言したトランスジェンダー)への連帯を示す「ウェルカム・ホーム。チェルシー!」の集会もニューヨークで予定されている。
よく晴れた空を背景に、渦をまいたり、のびのびとたなびいたりするリボンをみていると、愛が風にのる時間と空間にめぐりあった気がして、なんだか、気持ちがるんるんした。
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