2017年4月28日金曜日

はじめは5人だった―スタンディング・ロック たちあがった先住民の女性たち

April 27, 2017


心洗われる話を聞いた。スタンディング・ロックで闘った先住民の女性3人が、いずれも最後は涙になりながらも、その時の状況・思い、闘い続ける決意を真摯にわかちあってくれたのだ。そのひとり、ラコタのスタンディング・ロック族のブレンダ・ホワイト・ブル(Brenda White Bull)は、偉大な戦士シッティング・ブルの血を引いている。シッティング・ブルは、19世紀に、先住民を追い詰め土地を奪い殲滅しようとする白人の軍に対して先住民を率いて果敢に戦い、いまも先住民に勇気と誇りを与えている偉大な指導者だ。

Brenda White Bull from indigenous rising on Vimeo.




ブレンダは、「世代を超えたトラウマ(generational trauma)」について触れた。土地と主権、アイデンティティを奪われ、「この国の中でいったい自分は何者なのか」と証明することを強いられ続けるトラウマだ。生まれた時から、そのようなトラウマをせおわさわれる先住民。だが、「だからこそ、強さとパワーも受け継いでいる」のだとも。



自分が生まれ育ったスタンディング・ロックの地に、先祖の埋葬地や精神的遺産を侮辱し、命の源である水源を脅かすような形で「黒い蛇」パイプラインが設置されるという計画が明かされたとき、またしてもの苦難との闘いを余儀なくされることの理不尽に、衝撃を受けた。だが、ブレンダは思ったと言う。「私たちは、より大きく困難な闘いの中で先祖が夢を託した未来。私たちは、先祖の夢の実現だ。だから、闘う。そして子供たちに先祖の闘いを引き継いでいかせるのが、私たちの役目」だと。



秋が深まり、警察が軍からの払い下げの戦闘兵器で武装して、非武装の抗議者に対峙し、排除を試み始めると、退役軍人たちが先住民支援のために大挙、集結した。教育も含めたインフラに恵まれず、貧困家庭が多い先住民の中には、家計をなりたたせるために軍に志願する人が多い。ブレンダも、海兵隊で20年勤務した元軍人だ。そこに、先住民以外の、元軍人が加わった。


あの時、スタンディング・ロックで戦って死にたい、と思ってきた帰還兵が大勢いたと、ブレンダは言う。家族や友人に「最後の別れ」を告げてきた人たちが。多くがPTSDに苦しんでいた。国の都合で海外に派遣され、「義のない」戦闘に参加させられたことの不条理もあって国に帰ってからも苦しみ続けている彼ら。スタンディング・ロックで、自分の国で、納得のいく闘いに身をささげることにより、負の人生に意味を与えられる。そのために、死んでも悔いはない、と、考えたのだ。



「私たちは、彼らにこう言いました」と、ブレンダ。「違うの。私たちの闘いは、平和と祈りなの」だと。そのころのスタンディング・ロックを記録した写真に、先住民の長老が帰還兵に「許し」を与える儀式が写っている。おそらく、アメリカの白人の側にも「世代を超えたトラウマ」があるのだ。先住民の大量虐殺を行った「戦勝者」の、無意識のトラウマ。人を殺し、傷つけて、「無傷」でいられるはずがない。

「母なる地球は、泣いている。その泣き声がみなに聞こえるように、ひとは声をあげることができる。先住民であっても無くても。声をあげましょう」と、ブレンダは結んだ。




スー族のジェン・マーテル(Jen Martel)は、スタンディング・ロックのキャンプのコーディネーターとして活躍した人だが、警察の攻撃で多くの負傷者を出した10月27日を語った。重武装したものものしい警察が押し寄せ、まるで戦場だった。こんなことが、本当に起きているのか、目の前の光景が信じられなかった。現実とはおもえなかった。こちらは、まったく非武装だ。なのに、警察はかまわずテイザー銃で顔をねらってきた。笑いながら、頭とおしりを狙う。「死者が出る。たかが、パイプラインを引くために?」。パニックにおちいりそうになったジェンの耳に誰かが、何かを言っている声が聞こえた。「祈りましょう」。部族の古老の声だった。巨大な暴力をものともしない、祈り。だが、その古老も、その後、世を去った。


スタンディング・ロック族のキャンディ・モセット(Kandi Mossett)は、2016年4月に始めて集まったときにはたった5人だったスタンディング・ロックの闘いが、世界的な波紋をよぶ運動となるまでの経過、そして今年2月に強制的なキャンプ撤去でいちおうの区切りをつけさせられるまでの流れをわかりやすくたどってくれた。たった5人であげた声が、全世界の無数の人たちの目をさまさせたのだ。



「水は命」。スタンディング・ロックのキャンプを訪れた多くの人たちが、大地をいつくしむ暮らしにふれ、祈りのある暮らしに癒しを見たという。守るべきものを知ることで、生きることに目的が生まれる。



スタンディング・ロックでの野営の日々を語ることは、いまだに苦しい。まだ、口にできないこともある。それでも、人前で話し、思いを伝えることが、自分たちにとってもいやしなのだと、ブレンダたちはかたった。「私たちは、自分たち、そして自分の子供たち、子孫たちのために、戦っている。いつの日か、トラウマから解き放たれるために」と。



Indigenous Voices of Resistance @The New School NYC, on April 26, 2017

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