2016年12月31日土曜日

先住民と共に スタンディング・ロックからの報告会



Dec 31, 2016

1217日、「スタンディンロックからの報告会」(Reporting Back from Standing Rock)がNYで開かれました。独立系メディアDeep Dish TVが主催したこのイベントの全記録は、司会を務めたレベッカ・センテノが制作した記録映像でみられます。スピーカーは、「戦争に反対するイラク帰還兵(IVAW)」の共同代表マット・ハワード、独立メディアPaper Tiger などで活動するフィルムメーカーのジュリー・ルドウィグ、パレスチナに関する作品もつくってきた独立系フィルムメーカーのマット・ピーターソン、「水を守る人」の一員として野営地で運動のインフラや物流に関わってきたウィル・マンガーなど、ダコタ・アクセス・パイプライン建設反対の現場に赴いて生身の運動を見、体験してきた人たちでした。

高江や辺野古の運動の合わせ鏡として語られることも多い先住民の運動に、彼らは何を見たか? まとめてみました。


Standing Rock Report Back with Iraq Veterans Against the War (IVAW), Paper Tiger TV & The Native and the Refugee from Deep Dish TV on Vimeo.

大きな流れ


アメリカの化石燃料産業の構造は、ここ20年ほどで大きく様変わりした。地球温暖化に対する代替エネルギー開発の声があがる中、フラッキングなどの新技術の導入により、ブッシュ政権以来、従来はビジネスにならないと思われていたシェール層からの採取が可能になった。大変、不運なことにノースダコタ州はじめ先住民の保留地がこの開発やパイプライン建設の場にあたり、自らの暮らしには恩恵のない開発から大きな影響を受けるはめになった。

先住民への偏見・差別


アメリカの最南部は、ディープサウスと呼ばれ黒人への人種差別で歴史的に悪名高いが、ダコタ・アクセス・パイプライン建設反対運動が盛り上がっているノースダコタ州は、ディープノース(最北部)と呼ぶにふさわしく、黒人ならぬ先住民への差別はいまだに根深い。先住民は植民地の住民のような扱いを受け、資源を搾取されインフラも奪われている。

今回のパイプラインの建設に関しても、納得のいく説明や相談もないまま、先祖から受け継がれてきた文化的遺産や記憶を称えた土地を破壊され、環境が危険にさらされている。

先住民の闘いが独立メディアなどを通して知られるようになると、全米で先住民に同情する声が強まったが、地元の白人住民からは「先住民は乱暴だから警察や警備側の実力行使もやむを得ない。パイプラインは必要でしょ」という反応が多く、温度差がきわだった。


監視・規制の強化 暴力的弾圧



パイプライン建設に反対する先住民たちは、建設を進める企業の警備員のほか、警察による弾圧を受けている。9月末に州知事が動員をかけたため、州兵がこれに加わった。10月後半にパイプラインが通過する予定地に通過を阻む形で新たに抗議の野営地が設置されるや、弾圧は激しさを増した。

非武装の抗議者たちに対して、戦闘地で地雷攻撃にも耐えるよう作られたほどの武装車が動員され、催涙弾、ゴム弾、衝撃手榴弾、スタンガンなどが使用され、厳寒の平原で氷点下を下回る水温の放水が浴びせられた。暴力は高齢者にも容赦なく浴びせられた。

警察が守っているのは、市民の安全ではない。警備線の背後で粛々と妨工事を続ける企業だ。まるで「植民地」の現実だ。

先住民にとって軍との対決は、これが始めてのことではない。先祖が軍の手で惨殺されたことは集団的な記憶に深く刻まれている。先住民の抵抗は幾世代にもわたって引き継がれてきたのだ。州警察やFBIによる弾圧は過去50年間にも繰り返されている。今回の闘いでも祈りを捧げながらの行進や祈りのための集会ですら規制の対象にされた。

このような顔をつきあわせての対決の他、当局による徹底した監視も実施されている。毎日、早朝からヘリコプターや飛行機が低空で飛行して野営地のようすを監視している。野営地付近を通る公道にはパトカーが並ぶ検問所が設置され、通行する車を止めては、ナンバーとドライバーのIDをチェックし、ドライブの理由、滞在場所、目的地などをしつこく質問する。橋の封鎖も行われた。

警備にあたっているのは、地元モートン群の警察だが、全国の警察にも応援を頼み、全体の調整を行っている。さらに知事が要請した州兵が来たほか、パイプラインの企業が雇った民兵なみの警備員が我が物顔で公共の場までのしている。タイガースワンという民間情報会社はイラク戦争で悪名をとどろかせたブラックウォーターに連なる会社だ。また英国の多国籍警備会社で人権に関して世界各地で物議をかもしてきたG4Sも雇われている。

これに対していくつかの街で、先住民を支援する市民が自分たちの自治体から警察官を派遣しないよう地元警察に圧力をかけ、派遣が中止されたことは朗報だ。

 メディア


大手企業メディアによる取材・報道が乏しい中、独立系メディアやフィルムメーカー、地元に根ざしたコミュニティメデイアが果敢な取材を行い、逮捕者も出した。犬をけしかけたりの、警備側の攻撃がオンラインで大量に流れるまで企業メディアはパイプライン建設反対運動を無視するか、迷惑な妨害行為的な色眼鏡で捉えるのがつねだった。

また、125日に陸軍がミシガン川の川底部分での建設を許可しないと発表すると、野営地では当初「勝利」を手放しに喜んでいいものか、当惑気味だったにも関わらず、企業メディアは、「大勝利にわく現地」的な報道キャンペーンを行い、「勝ったんだからもういいでしょ。引き上げれば?」という流れを作りたいかに思えた。


退役軍人たちが応援にかけつけた



ニューヨークに拠点をもつ「戦争に反対するイラク帰還兵の会(IVAW)」の共同代表マット・ハワードは緊迫した現地を目にした時の第一印象をこう語った。野営地、条網、ヘリコプター、重装備の軍用車を目にした時、「デジャブ」感に襲われて、身体全体でぞっとした。イラクの戦闘地に舞い戻ったかのような錯覚を覚え、一緒にいった帰還兵の仲間と思わず顔を見合わせた。仲間の思いも同じだった。

応援にかけつける退役軍人の数はどんどん膨らみ、数千人に達した。ミズーリ川を管轄する陸軍工兵司令部は管轄地からの抗議者全員の撤退を命じ、緊張が限りなく高まった。が、その後1週間あまりで陸軍はミズーリ川の川底でのパイプライン建設に許可を与えないという決定を出した。この急転直下の進展の背景には、大量の退役軍人たちが支援にかけつけたことが効いたと考える人たちもいる。陸軍も帰還兵と闘うのは、気が進まなかっただろうからだ。

だが、会場からの質問に対し、マット・ハワードは、「勝利」の最大の要因はあくまでも先住民の断固とした闘いだと謙虚に応えた。ただし、と、こうつけ加えもした。「戦争に行った一兵士として、僕らは警備にあたる兵士たちにこう語りかけることができた。兵士は、心にそまない、望まない命令を与えられることがある。その任務にあたることが、どんな思いか、僕らにはよくわかる。でも、その体験を経たからこそ、僕らは間違いは間違いだと言うようになり、いま、ここにこうしている。彼らに対して、そういう語りかけができたことは、大事だったと思う」

支援者



独立フィルムメーカーの、マット・ピーターソンは、野営地のようすを次のように語った。

「続々とやって来る人たちの群れで、野営地の中はまるで大都市の盛り場のような様相を呈するようになった。あたり一面、支援者ばかり。先住民の姿がかき消され、都市から来た若者が和気藹々と出会いを楽しむみたいな状況になったこともある」

秋のうちは、野営地の中で、先住民と支援者、支援者同士などの間で、さまざまな行き来や交流があり、活動はもりあがった。だが、本格的な冬の到来と共に、サバイバルが活動の中心を占めるようになった。「勝利」により現場で当面、大きな動きはなさそうだ。サバイバルに慣れたごく少数をのぞいて引き上げ時だった。

報告会のスピーカーの多くが口々に語ったことは、先住民の地でのすばらしい体験だ。自然に包まれ、温かい歓迎を受け、ぜひまた行きたいという。が、運動のつねとして混乱と内部での意見のぶつかり合いもあったという率直な発言もあった。

この日のスピーカーたちのほとんどは、先住民ではない。先住民の「水は命」という断固とした姿勢に頭が下がる思いがしたと口々に言う。闘いの主人公は先住民。何をすべきか決定するのも、彼ら。自分たちは先住民の意思に耳を傾け、望まれる手助けをするためにいるのだ、と。


これからの動き 大きな可能性



現地を離れてできることは何だろう。パイプライン建設に経済的打撃を与えるべく、投融資を行っている銀行に投資を撤退するよう圧力をかけるのも有効な手段だろう。また、野営を続ける先住民たちに支援金を送ることも役に立つ。

マット・ピーターソンはスタンディングロック・スー族の闘いに大きな可能性を見ている。この闘いのために19世紀以来という規模で南北アメリカ大陸の先住民たちが結集した。環境運動の活動家、ブラック・ライブズ・マターの活動家も支援に訪れ、沖縄はもちろん、国際的な市民運動からも応援の声が届いた。別のパイプライン建設反対運動では、歴史的に敵だったカウボーイと先住民が、環境を守るという共通の目的で連帯したこともある。

連帯や運動の組織化の現場が、都市から人里離れたパイプライン建設現場に移動した。現在、幸か不幸か、人々の切実な問題に対応できる左翼組織は不在だ。だからこそ、手垢のついた古い構造やしがらみにふりまわされない、まったく新しい形のアクティビズム一から組み立てていくことができるのではないか、と。

化石燃料による環境破壊になど一顧も与えようとしないトランプ。ダコタ・アクセス・パイプライン建設阻止が、先住民にとっても環境運動にとっても重要な闘いの場になるのは間違いない。決戦は、これからだ。

2016©  Hideko Otake

0 件のコメント:

コメントを投稿