2017年10月31日火曜日

「死にたい、辞めたい」自衛隊員たちの悲鳴––小西誠さんの講演会報告

Oct 30, 2017

 現在、島嶼作戦の演習が繰り広げられている自衛隊。奄美大島の市街地で警備態勢が取られ、今後は対馬でのように市街地で戦闘訓練が行われるようになる可能性も大らしい。そんな中、大分で演習中だった隊員1名の自死が報道されました。安倍政権による戦争ができる日本への強引なかじ取りにも拘わらず、自衛隊にはパワハラ、いじめが蔓延し、「死にたい、辞めたい」という声がもれ聞こえ、戦争どころではない状態のようです。


 元反戦自衛官として、反戦に向けて精力的な活動を続けながら、「自衛官人権ホットライン」相談室を運営し隊員への人権抑圧への対処に貢献し、『自衛隊 この国営ブラック企業』の著書もある小西誠さん。ホットラインの掲示板には、隊員や家族の悲鳴のような書き込みが、続々と送られてきます。101日の京都での講演は、自衛隊の現場を身をもって体験し、現状も熟知なさっている小西さんならではの生々しいものでした。以下、かいつまんでまとめてみました。(文責:大竹秀子)


 いじめ、パワハラ、自殺。この10年間で自衛隊員の家族からの裁判が急増し、現職自衛官による告発・裁判も始まっている。「自衛官人権ホットライン」相談室への相談で、最近、一番多い相談が、幹部自衛官からの相談。上級幹部から下級幹部へのパワハラ。

 もうひとつは、辞めたいのに辞めさせない。一般隊員は2年、あるいは3年の任期制で、その間は辞めないと誓約して入隊するので、その間はなかなかやめられないが、それ以外の幹部クラスでも辞めたくても辞めさせない。引き止められてうつ状態になり、どうにもならなくなって相談室に相談してくる。

 辞めさせない理由は、隊員の不足。特に海上自衛隊。海自は、ある意味で一番忙しい。ジブチに行ったり、湾岸に出ていったり。その他、演習で航海ばかりやっている。一番、人気がなく、定員も相当、割っている。

 日米共同演習がすべての部隊に広がっているが、アメリカはずっと戦争をやり実戦体験をつんでおり、訓練が全然違う。米軍には頭があがらない。自衛隊は、たとえば通信など技術屋になれ、プロになれという教育をする。下士官層と幹部層が多くて任期制の一般隊員が減っている。部隊によっては一般隊員がはいってこない。下士官でもいつまでたってもお茶くみでいじめられる人がいっぱいいる。

 いま、自衛隊の中が大変なストレス状態にある。原因は複合的。自衛隊の大再編が始まり、全国的な異動がおき、仕事も変わる。いままで戦車部隊だった人が急にミサイル部隊に配置など、仕事が変わり、勤務地も変わる。これから先島諸島への転任も間違いなく増える。家族が行きたがらないと単身赴任になる。そういう状態の中で非常に複合的な要因でストレス状態が蔓延している。



 自衛隊の中でプライバシーや人権はほとんどない。人権が保障されないのは、旧日本軍以来の伝統。しかも自衛隊は24時間勤務体制。幹部以外は基本的に営内居住、自衛隊の柵の中で居住するのが原則。曹以上でも原則として営内居住だが、結婚していると営外居住が許可される(士長以下は、外出・外泊での営外居住)。将校は営内に住まない、昔から。

 自衛隊にも自前の自衛官ホットラインがあり、自衛隊OBの天下り先になっている。上司がまともで解決する場合もあるが、相談しても放置されたり、プライバシーが守られず、すぐパワハラ加害者に通知される例もある。パワハラ裁判での幹部の証言のように、「指導とパワハラの区別がつか」ない。基本的に「弱いものがいじめられる」「弱い者が死ぬ」「ささいなことで騒いでいる」という発想。

 自殺が何件もあるが、遺書さえ隠す。自殺者が出ると隊内はもちろん、民間のアパートでも司法警察権をもつ警務隊がまっさきにかけつけて、捜索と称して遺書などを処分してしまう。事件を認めると上官に処分が及ぶので、必ず、隠す。

 辞めたい場合には、苦情申し立てのフォームがあるのでこれを提出する。上官がまともであれば、処理が始まるが、自分たちも監督ふゆき届きで管理責任を問われるたくないため、無視して半年、1年、放置するケースがある。そんな場には、自衛官人権ホットラインに連絡すると上司に報告すると、やっと腰をあげる。そういう場合もある。

 それでもやめられない場合は、死ぬよりましだから脱走してじください。脱柵といいますが、自衛官の脱走は簡単。外出し、自宅・実家に帰り、家族から「やめる、帰らない」と電話してもらう。自衛隊の内規では、脱走しても20日以内にみつかれば行政処分ですむ。20日をすぎれば自動的に懲戒免職。20日以内に通告すれば、軽い処分ですむ。自衛隊はいったん帰ってこい、帰ってきたら辞めさせると必ずいいますが、帰ればひきとめられる。絶対、帰るな。鍵を開けるな。そのまま辞めるよう、アドバイスしている。脱走という形式をとった退職願い、これで大体、やめられる。

 自衛隊員は新聞を読まず、テレビのニュースもほとんどみない。多いときには、演習で1か月、2か月、山にこもり、海自は船に乗っている。政治に対して、無知状態におかれ、安保法、集団的自衛官など、ほとんど伝わっていない。自衛隊員が危機感をもつのは、そのための訓練や出動準備が始まったとき。鈍感な状態に置かれている。心配するのは、家族。

 機動隊と自衛隊は違う。機動隊・警察は、非常に政治警察。政治的に訓練されて、ひとりひとりが法律を執行する。自衛隊は、組織として執行する。隊員は政治的ではない。逆に非政治的にする。精神教育やりますが、ほとんど誰も聞いていない。軍隊は解体すればひとりひとりばらばら。力はなくなる。警察は、最後まで残る。

 [万一、戦争になった場合、自衛隊員がそんな状態で、戦えるのかという会場からの質問に応えて]現代の「先進国」の人権意識と生命に対する意識、これと軍隊は完全に矛盾している。ロシアですら兵士の母の委員会など家族会があり、チェチェンの戦闘現場に集団で出かけて行方不明になった息子を探し、撤退を呼びかけている。アメリカはずーっと戦争を続けているが、25%がPTSDに陥っていて、元兵士や家族の反戦運動が行われている。

日本の自衛隊は、世界で唯一、軍法会議がない軍隊。自民党の改憲案の中で「審判所」というのがでてくる。これが軍法会議で、密室裁判で処分する。そういう強制をしてもたぶん、無理。(戦争しろといえば)、おそらく脱走が続出する。少子化社会で、一人っ子も多い。家族も、戦死するより1年くらい刑務所にはいってくれ、1年もたてば戦争は終わっているから、と勧めるだろう。そういうことになるだろうと思いますよ、僕は。

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