2017年10月5日木曜日

レポート:「今 自衛隊をどうする?」 オキナワ島嶼戦争――南西諸島への自衛隊配備 ~講師 軍事ジャーナリスト・小西誠

10月1日、京都で開かれた元反戦自衛官で軍事ジャーナリストの小西誠さんの5時間講演。先島で着々粛々と始められ、メディアの沈黙の中、ひっそりと進められようとしている自衛隊による軍事化。情報公開請求や現地での取材、米日の戦略の分析であらわにしていきます。
南西諸島への自衛隊の大配備計画、そしてその目的とされる「離島防衛作戦・上陸作戦」が初めて策定されたのは2000年、尖閣問題で日中関係が悪化するはるか前のことだといいます。冷戦の終結で長年の仮想敵国を失った防衛省・自衛隊は米軍ともども、その存在理由をかけて新しい敵を必要としていた。恰好な存在が中国でした。先島諸島への自衛艇の配備は、中国封じ込めを目的としており、自衛隊は「米軍、とりわけ沖縄駐留米軍の介入さえ極力避け」て「自衛隊主体の戦争」を想定していると小西さんは言います。日中間の緊張をあおってきたのは、誰なのか?




正確な情報は、小西さんの著書『オキナワ島嶼戦争』、オンラインに掲載されているPDF『メディアが報じない実態』、そしてIWJが報じたこの日の講演に詳しいのですが、特におそろしく印象に残ったことだけ触れておきます。


日本の南端、与那国島には山・丘を切り崩して自衛隊駐屯基地が作られ2016年3月に開隊式が開かれたが、住民には「保管庫」といってごまかした弾薬庫は、天然記念物である与那国馬の放牧場に作られた。その巨大さに小西さんは驚く。「明らかに沿岸警備隊だけの弾薬庫ではない」。


日本の南端、与那国島には山・丘を切り崩して自衛隊駐屯基地が作られ2016年3月に開隊式が開かれたが、住民には「保管庫」といってごまかした弾薬庫は、天然記念物である与那国馬の放牧場に作られた。その巨大さに小西さんは驚く。「明らかに沿岸警備隊だけの弾薬庫ではない」。
宮古島には当初、大福牧場一帯に貯蔵庫(実は弾薬庫)や司令部がおかれる計画だったが、住民の命ともいえる地下水流域界にあたることから予定地は撤回された。だが、もうひとつの配備予定地、千代田地区案はいきている。宮古島は自衛隊の当初防衛線において「事前集積拠点」と位置づけられており、「自衛隊はミサイル部隊、そして事前集積拠点、地下司令部を築くために、今後もこの宮古島の東部海岸地域を確保することに必死になるだろう」という。また野原には旧式のレーダーに変わり、最新式のレーダー2基が作られており、住民への電磁波の影響も心配される。


自衛隊が宮古島にこだわるのは、伊良部大橋で結ばれた下地島に3000メートルの滑走路をもつ下地島空港があるからでもある。1973年に民間機パイロットの養成場所として作られたが、現在はあまり使われておらず、米軍も自衛隊ものどから手が出るほどほしい空港だ。しかし、この空港の建設にあたり、1971年に、当時の琉球政府行政主席だった屋良朝苗が「軍事利用をしない」という取り決めを日本政府と取り決めており、軍事利用への市民の反対は強い。


どちらかというと平たい宮古島に対して、山々が連なる石垣島は、敵のミサイル攻撃を回避しつつ味方がミサイルを発射する際、隠蔽できる地形があり、山々のふもとにある高い標高の平地、平得大俣地区が自衛隊配備予定地とされている。現代の島嶼防衛線は、地下壕戦になるため、駐屯地の背後に無数の地下壕やトンネルを築いて戦闘を行う想定だが、さて、住民の安全をどう確保するのか。住民避難は不可能。つまり、住民は守れないし、守らない。


もうひとつ、今回のプレゼンで驚いたのは、奄美大島の現状だ。防衛省は、2017年度予算の概算要求で、「奄美市と瀬戸内町に配備する陸自部隊の本体工事に計395億円を計上し、2019年3月末をめどに部隊を編成する」という。地対空ミサイル部隊や地対艦ミサイル部隊が配備されるようだが、防衛省による説明会は一度簡単に行われただけどで、住民ですら「基地建設の全容が全く分からない」。その中ですさまじい自然破壊が始まっている。小西さんによると全国メディアによる報道は、いまのところ皆無だ。


ところで、2016年暮れに小西さんが『オキナワ島嶼戦争』を出版された時、まっさきに聞こえてきたのがネトウヨからの評。「なんだい、なんの新味もない。こんな情報、とっくに知ってら」というものだったらしい。粛々と進む日本の国粋的な軍事化、右翼はとっくにご存じ。知らぬは、のんきな市民たち、ということか。気づいた時には、すでに時、遅しとならないよう、いまからでも宮古島や奄美、石垣の人たちの基地反対運動に私たちはもっと耳も手もかさなくては。



さて、そんな大変なことになりそうないま、自衛隊員は、いじめにあい、「死にたい、辞めたい」と悲鳴をあげている。この日の講演の第2部は、「今、自衛隊でおこっていること」。なかなか、聞けないびっくりの裏話。こちらについては、また後日、ご報告です。

参考リンク
メディアが報じない実態
FB: ミサイル基地のない平和な島を!石嶺かおり応援団
IWJ: 「今 自衛隊をどうする?」 オキナワ島嶼戦争――南西諸島への自衛隊配備 ~講師 軍事ジャーナリスト・小西誠氏 2017.10.1 

2 件のコメント:

  1. ありがとうございます。すばらしい簡潔なまとめです。

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    1. ありがとうございます。少しでも多くの方に知ってほしい、ひろめたいと。

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