2017年12月16日土曜日

アメリカの国防予算がとんでもないことに

2008年度予算で軍事費の大幅増額を求めてきた共和党。現在、軍事費の予算案は6430億ドル。常軌を逸している。どう考えたって。
NYタイムズ社説(2017年12月15日)。以下、ざざっと要約です。(文責=大竹秀子)



現在、軍事費の予算案は6430億ドル。国防総省自身の委員会による調査で、同省が国民の税金でまかなわれる膨大な予算のうち、5分の1を無駄遣いしているという結果が出ているし、いくら北朝鮮やイスラム過激派の脅威を考慮するにしても、他に予算をぜひとも必要とする分野がいくつもある。いまだってアメリカの軍事費は、世界第1位。2位以下8位までの国の軍事費を総計したよりも多い金額。この膨大な額は、あんまりではないか。



5月にトランプが出した案では国防費な6770億ドル。しかし、2008年の未曾有の経済危機でこりた米連邦議会は、2011年の予算管理法によって制定された国防費の歳出上限(キャップ)をすでに540億ドル上回っていた。ところが議会は、11月に国防予算の大枠を決める総額7000億ドルの2018年度国防権限法案を可決し、トランプは今週、同法案に署名をすませた。これで国防予算が決まったわけだが、このままだと国防費歳出上限(キャップ)を850億ドル超過する。

予算管理法による歳出上限を排して予算を割り当てない限り、国防予算の実現はありえない。共和党は最低トランプの原案で生じる540億ドルの国防費歳出上限超過を国防予算で、残りの370億ドルを非国防費予算にいれて予算案を成立させたいとし、民主党は国防費・非国防費両方で同規模の増額を主張し、せめぎあっている。

2015年の調査によると、国防総省は、予算の5分の1にあたる1250億ドルを無駄使いしたという結果が出ているが、同省はいったい、これにどう応えるつもりか。

国防総省は、9・11同時襲撃テロ以来、好き放題の予算を受け取っている。2017年の軍事費は、1980年代の軍拡当時なみに達していた。イラクとアフガニスタンからの撤兵後にもかかわらず、2018年度案が実現すれば、1980年代を上回る。制服軍人が大好きで最新兵器にすっかり夢中のトランプはさらに大きくさらに優れた軍をおのぞみだ。軍の上級幹部たちも、熱心なロビー活動に励んでいる。戦闘態勢を整えるには、訓練と装備がもっと必要だ、と彼らはいう。

確かに、9・11後の16年間、ほとんどひっきりなしに戦争が続き、軍は疲れぎみかもしれない。だが、専門家の話では、実際の戦闘を担っている地上戦力部隊が危機的状態にあるという事実はないし、軍の劣化という主張には誇張がある。

予算の少々の増加は理解できるし、必要ともいえるだろう。たとえば、2001年から2012年まで現役軍人1人あたりの費用は、医療費と給与の上昇で、インフレ調整後で6%増えた。こうしたコスト増大は、国防総省による人員削減を導いた。

だが、多くの予算増加は、ロビーストたちがいりもしないぎょうぎょうしい武器を支援するよう議員にすりよるおかげで、手続きがますます複雑化し、機能不全となった議会の予算審議から生じている。こうして議員たちは、こんなに金をかけることなく、国をより安全にできるもっとよい選択があるだろうに、過大な値をつけたF-35 ジェット戦闘機のような役立たずのプログラムや、30年間で1兆ドルを超える核兵器の刷新に金をそそぎこんでいる。

そんな中、国防総省の調達担当官のエレン・ロードが、議会にむけて「適切ではないし、そこにお金をかける余裕もないハイテク玩具はもうやめましょう」と述べたのは、朗報だ。国防総省が初の監査を決めたことも。

国防総省がほしいものをなんでも手にすることができないのは、他の省庁と変わりない。軍は国防にとってきわめて大事だ。だからといって他のプログラムを犠牲にしてリソースや納税者の金を好き勝手に使ってよいわけがない。

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