2017年9月25日月曜日

アミラ・ハス:沖縄取材を終えて

Sept 18, 2017

アミラ・ハスの東京講演2日目。その1(1/2)


この日のテーマは、「パレスチナと日本」。特に沖縄での4日間の取材を終えたばかりのアミラさんに、「沖縄とパレスチナの共通点」「加害国の人間が、自国の加害を伝えていくことの意味」を語ってもらうことが、主催者である土井敏邦さんからの問いかけだった。この日は「沖縄 うりずんの雨」の一部上映、森住卓さんの「辺野古・高江の現状報告」に続いて、アミラさんの沖縄報告、ユンカーマンさんとの対話が行われました。


まずは、アミラさんの沖縄報告から。9月11日から15日まで4泊5日の沖縄でアミラさんがあってインタビュー取材を行った相手は、以下の通り。

1)佐喜眞美術館の館長 佐喜眞道夫さん。佐喜眞美術館は丸木位里・丸木俊の共同制作「沖縄戦の図」が常設されており、普天間基地に向けておへそのように飛び出して隣接する地に位置しています。この地への設立を実現するまでのいきさつの説明もあったようです。
2)高里鈴代さん。基地をめぐり沖縄での米兵による性暴力の歴史
3)知花昌一さん。チビチリガマを一緒に訪れて、くしくもチビチリガマ荒らしの第一発見者のひとりになりました。
4)金城実さん。読谷にお住まいの彫刻家。アミラさん、すっかり興味をもたれてインタビューは予定を大幅にこえて、翌日におよんだそう。わかるよなあ、その気持ち。
5)反戦地主の池原秀明さん。
6)辺野古の金城武政さん。お母さんを米兵に殺害された金城さんは、辺野古の新基地建設反対活動の中心的人物です。
7)高江の伊佐真次さん。高江住民でヘリパッド建設に反対。現在、村議会議員です。
8)辺野古商工会議所の飯田昭弘さん。容認派の声もぜひ聴きたいというアミラさんの要望で取材実現。



*沖縄を取材して

「4日間の取材だけでこの場で沖縄を語るのは気がひける。いずれハアレツ紙できちんと記事を書くつもりだが、今日は自分の考えをまとめる意味もあり、お話します」との謙虚なことばで始まったアミラさんの沖縄報告。が、観察眼・分析力は、さすが鋭い。

まず、強く印象に残ったこととして沖縄の人たちが「沖縄戦をまるで4~5年前の出来事であるかのように語り、戦争がいかにひどいものであるかという思いを持ち続けていることに感銘を受けた」。「アメリカやイスラエルがひどい戦争から学んだことは、戦闘員とターゲットとの距離をできるだけ広げることで、そうするための武器や戦法が開発されてきた。おかげでいまでは多くの戦闘はテレビゲームと化し、遠くからボタンを押すだけで家族全員の殺戮が瞬時に行われ、新兵の募集に関しても本人や家族に対して戦争の安全性をアピールするようになっている」。そんなこともあり、「沖縄で私が出会った戦争の衝撃を新鮮なまま保ち、また自分たちと同じ状況に置かれた人たちの苦しみをわがことのように想像することができる力に感嘆した」。

これが特に重要なのは、「アメリカやイスラエルが戦争の悲惨さから学んだことは、戦闘員とターゲットとの距離をできる限り遠ざけることだった。戦法や武器の開発でいまでは戦闘の多くはテレビゲーム化し、遠いところでボタンを押すだけでターゲットとされた家族全員を一瞬のうちに殺戮することも可能になった。こうして兵士を募集するとき、本人や家族に戦闘はずいぶん安全になったとアピールしている」

「だが、沖縄で戦争の悲惨についての衝撃がまざまざと保たれていること、そして自分たちが味わった苦しみを、同じような状況に置かれた他の人たちが味わう、その体験を思い描くことができる力に感銘を受けた。自分たちの地から飛び立つ戦闘機が、自分たちの地で戦闘訓練を受けた兵士が別の場所で人々を殺し、同じ苦しみを繰り広げることが耐えられないということばを聞いた」。

「パレスチナの人たちには、あらゆる手段を使って占領に抵抗する権利がある。これは間違いのないことだ。だが、武装闘争への宗教的なまでの思い入れ、武装闘争の神聖化もみられる。だが現実的にみて、パレスチナとイスラエルの武力の差は「かつての原住民インディアンとSF映画に登場する軍」くらいの膨大な差がある。紛争の軍事化は残忍な結果を引き起こすことになる。だから紛争の軍事化・残虐化をおこさせない責任が私たちにはある」。

「沖縄に基地が存在することは知っていたが、沖縄戦の規模、集団強制死が行われたことははじめて知った。また、知花さんの話から、1980年代頃まで、集団強制死の実態が日本の人たちにもあまり知られていなかったことにも驚いた」。

*沖縄での米軍の存在

「北朝鮮によるミサイル発射後まもなく、沖縄を訪問した。普天間基地に隣接する佐喜眞美術館の佐喜眞さんに基地の動きを聞いてみた。が、基地内で戦闘機が特別に飛来したり、部隊の移動準備が行われるなどの動きは一切みられず、いつも通りだという。政治的な理由から『緊張』があおられているのではないか、緊張を利用して日本にアメリカ製の武器を売りこむビジネスチャンスをうかがっているのではないかという印象を受けた」

「日本の中央政府は住民の意思に反し、また人々の暮らしや自然の破壊をかえりみることなく基地の固持、軍事化を進めているようだ。その理由・動機はなになのか、これまでの取材ではまだつかめておらず、これから学びたいと思っている」

*   *   *



アミラさんの来日講演についてはNHKが1時間のドキュメント番組を取材中で、また、土井さんがアミラさん来日全体を描くドキュメンタリーを制作予定とのことで、講演に参加できなかった人たちもそのうちじっくり観る機会ができるのは、うれしい。ここでは、講演2日目のメニューからアミラさんの講演と「沖縄 うりずんの雨」の監督ジャン・ユンカーマンさんとの対話のさわりを2回にわけてざざっと報告していきます。当然、書ききれないことがたくさんありますが、堪忍。もちろん、文責は大竹にあります。誤解があれば、ご指摘いただければ幸いです。

ジャン・ユンカーマンさんとの対話についてはパート2でご報告。

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